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主にハイパーインフレーション(漫画)について書いていきます

ハイパーインフレーション グレシャムに関しての考察 ※12話時点

悪貨は良貨を駆逐する  トーマス・グレシャム

 

 

有名な金本位制の経済学のの法則で、

全世界的に共通課題であり、不変的真理として語り継がれているこの言葉。

まさに本作品の根幹のテーマであり、

ルークの能力の脅威を表している一文でもある。

 

本作品の大奴隷商人グレシャムの名前は、

上記の提唱者であるトーマス・グレシャムの名前からとったと考えて間違いないであろう。

ただ、本作のグレシャムはそんな高尚なことは考えずに、

既に悪貨をばら撒こうとしている。

 

極悪非道の手口で利益を得て、自身も手を汚す生粋の悪人だが、

どこか憎めないグレシャムについて、

本記事では語っていきたいと思う。

※12話時点

 

 

 

グレシャム商会という組織を運営しており、

 奴隷制が禁止となった後も闇取引を行っている。

 犯罪組織や秘密組織や反政府組織といった帝国の魑魅魍魎とも仲良し。

 

初登場は1話で、試金石をもってルークの偽造金貨を見破ることにより、

贋金というものの影響力を読者に紹介する役割だった。

周囲のモブからは「大奴隷商人」、「神出鬼没の商人」、「大きな赤ちゃん」など好き勝手言われているが、

二つ名の浸透度から見てもかなり有名ではあるようだ。

 

現時点ではグレシャムの商売は、

奴隷売買、裏オークション運営、武器販売と、

闇の商売のオンパレードだが、

グレシャム商会と銘打っているので、

表の顔としての事業もありそうである。

ルークを勧誘している際にも社会的インフラの拡充構想もあったので、

経済界の表と裏を知り尽くした豪商であることがうかがえる。

 

偽札の売り先候補として、怪しい組織と信頼関係(?)があり、

回想の描写が仲良しすぎるのに偽札を売りつけてやろうとする様は、

グレシャムらしいなと思うだけで読者もすでに驚きすらしない。

彼のカネ稼ぎに対する姿勢についてはもはや美学を感じるくらいだ。

 

 

■カネのためにカネを稼ぐ

 

グレシャムはカネを得て何かしたいという欲があるわけではなく、

あくまで大量のカネ、資産を積み上げたいという確固たるポリシーがあるのみなのだ。

本来、手段であるべきカネが目的となっているパターンだが、

あまりにまっすぐなその思いは清々しさすら感じる。

グレシャムがガブール人だったら、ルークと同じ能力を得ていたのではないだろうか。

 

ただ、グレシャムは特に過去の描写がないため、

現在のような守銭奴になった背景は語られていない。

昔からずっと同じスタンスなのかどうかはわからず、

何か現在の思考にたどり着く事件があったのかもしれない(多分ない)。

 

カネを稼ぐことが好きなだけで、ルークとは異なり、商売によるWINWINの関係を目指すといった思考が無い。それでもなお周囲に人が集まるのは彼の提供する商材や場が魅力的なことの証明でもある。

ダイの大冒険フレイザードのセリフ「オレは戦うのが好きなんじゃねえんだ…。勝つのが好きなんだよォォッ!」を彷彿させる。

というか、フレイザード自体が生後約1年の大きな赤ちゃんで、欲望が擬人化したような存在なので、グレシャムと立ち位置が重なる。

周囲の人間を自分の利益になるかどうかだけで考えているので、フラペコの苦労が目に浮かぶ。

 

 

■年は60近いが、足が速く戦闘能力も高い

 

オークション会場から逃げ出す際に、

火事場泥棒で入手した宝石や金を袋一杯に詰め込みながらも、

一緒に逃げていたオークション参加者がドン引きするぐらいのスピードで走っている。

 

加えて、逃げるための馬に乗る権利のオークションを拒否した人間を、

暗闇の中で正確に銃で足を打ち抜いたり、

船上でも、欲張り銃身なペッパーボックスピストルだったとはいえ、

多くのガブール人を返り討ちにしていることから、高い射撃能力を持っていると思われる。

また、素手で屈強なガブール人を撃退している描写もあり、

ただの嫌な商人とは一線を画する戦闘能力の高さは、

多くの修羅場を生き延びてきた豪傑であることがうかがえる。

あの太っちょボディも筋肉の鎧なのかもしれない。

 

 

 

■ヒトや物の価値に値段をつける癖

 

癖とナレーションでは紹介されていたが、がもはや能力のレベルで、一種の共感覚の域である。長年証人として培った審美眼がなせる技であろう。

今までグレシャムが値付けした代表的な対象をいくつか記載する。

 

・健康的な男性奴隷 60万ベルク

・ダウー 300万ベルク

・ルーク 122億5698万2025ベルク なおも高騰中  ※11話時点

・レジャット 0ベルク

 

グレシャムの値付けの根拠は審美眼だけでなく、

レジャットを評価した時のように商人としての勘も影響している。

ルークに100億以上の値付けをしたときにはフラペコに「それ壊れてんじゃないですか~!?」と、

少しバカにされていたが、12話での贋金流通計画の一カ年計画での利益が150億ベルク以上だったことを思うと、

あながち外れておらず、能力の一端を見ただけで、即座に期待値の近似値を試算できている点は恐怖すら感じる。

 

個人的にはフラペコの価値をどの程度に見積もっているのか気になる。

あれだけ無茶ぶり繰り返しながら、一定以上の成果を得る側近はなかなかいないと思うので、

感動的な感じで「フラペコの価値はお前らごときでは釣り合わん」とか言いながら人質交換してほしい(多分ないし、しない)。

 

 

■老獪な交渉術と的確な情報分析

 

船上の頭脳戦の入れ替え案の応酬にて垣間見えたが、

グレシャムは商談において譲歩をしない。

もちろんただ強情なだけでなく、自身の有利不利やリスクリターンの計算を並行して行っている。

キンゲームの際にはルークの巧妙な脅しに屈したが、

それも強奪案を強行することで金庫を落とされるより、

交渉したほうが期待値が高いと値踏みしていた部分もあるだろう。

 

その交渉の中ではルークの話に乗ったふりをしながら、

どうやったら自分の利益を最大値にするかを並行して組み立て、

すかさず部下に作戦共有・実行に移す計算高さと行動力、

そしてその強欲さはグレシャムというキャラクターの魅力を最大限に表していたといえる。

HUNTER×HUNTERの選挙編で、ヒソカがキルアとアルカをやるかやらないか思案していたシーンを彷彿とさせる。

それを実行に移すのがグレシャムさんなのである。

残念ながらレジャットには看過されていたが。

 

 

■「私に価値はないぞ」

 

個人的にグレシャムの最も魅力的なシーンは、

8話でルークが空のピストルを突き付けた際に放ったこの言葉のコマである。

 

あれだけ守銭奴描写を重ねて、モノやヒトに価値をつけ、

多くの財宝や配下を有しているグレシャムだが、

自身には価値が無いと断言するというギャップが心地よい。

 

実際にグレシャムを人質にとったところで、

フラペコはわからないが他の配下たちは忠義ではなく金でつながっており、

グレシャムに人質の価値は無いという事実及び自覚があるのであろう。

HUNTER×HUNTERのヨークシン編における、

さらわれたクロロが異常なまでに落ち着いている様とダブる。

 

また、見ようによってはルークが案を考えてくると言って戻ってきたかと思ったら、

まさかの成功しえない強硬策であることに対する落胆とも見える。

 

 

 

 

今後グレシャムとは敵になったり協力関係になったりを繰り返しそうだが、

最後までどこか憎めないキャラとして物語をかき回してほしいものだ。

最期は恨みを買った誰かに殺されそうではあるが。