warayamanga

主にハイパーインフレーション(漫画)について書いていきます

ハイパーインフレーション16話感想

矛盾する思いがある。

 

ハイパーインフレーション最新話は更新されたらすぐ読みたいが、

読むと興奮して眠れなくなるので、読みたくない。

 

 

相変わらずのデフレ知らず。

船編の最後としてふさわしい、

各々が持ち味を最大限に活かした回だったといえる。

 

特に今回は細かい描写で光るものが多く、

それらを拾っていきたいと思う。

 

 

■レジャットの提示したルークの帝国での待遇

 

レジャットにとっても最後の一縷の望みをかけた勧誘。

ハル姉は奪還し、ある程度の自由は担保するといった内容だった。

ルークの中で引っかかっていた、レジャットがガブール系であるにもかかわらず、

帝国に忠誠を誓っている理由としてもレジャットなりの主義を明かした。

ルークも少しゆらぐ。が、これは時間稼ぎの演技なのか本心なのかは微妙なところ。

 

ルークにとってレジャットはグレシャム以上に信用が無い。

最も大きい理由は麻酔の所有についての疑念の部分だろう。

グレシャムは予想外の密航ダウーに対して、麻酔を使用して鎮圧。

ルークの確保のために麻酔を持ってきていることをルークは認識し、

能力に気づいていることも隠して接近しているため、

レジャットの言葉を信じることは難しい状況である。

 

グレシャムかレジャットと組まなければいけない状況は、

嘘喰い』における羽山父が、鞍馬か滑骨どちらにつくか悩むシーンを彷彿とする。どっちもどっち。

 

また、レジャットの提案は一見平和的なようだが、

施設の中庭と状況を限定しており、軟禁は示唆されている様子が怖い。

 

 

 

■フラペコの国家に対しての感情

 

その能力を認められ、レジャットから引き抜き打診を受けたフラペコであったが、

革命孤児のフラペコにとって国家とは一切の信用のおけない存在であり、

あれだけ拷問を嫌がっていたのに、グレシャムを裏切るという選択肢はありえないという強い信念を感じた。

まあ、その後殺されそうになる時は駄々をこねるわけだが。

 

結局、レジャットの正義はあくまで強者の論理であり、

革命を経験しているフラペコからすると詭弁でしかないと感じるのであろう。

事実、帝国は植民地化を進め自身の価値観を浸透させようとしているが、

ヴィクトニア帝国の人間がガブール人のルークをバカにしている描写もあり、

ガブールの首長は帝国の文化に触れる中で、同族の弾圧という手をとっており、

人類同士の争いや差別はなくなっていない。

それが国家の限界であるし、全員がレジャットのような狂気に近い正義を持つことは不可能である。

 

 

 

グレシャムの一挙手一投足

 

今回主役のグレシャム

まず気になったのが、秘策の伝授の際に金庫を捨てることを特に苦悶の表情を見せずにルークに助言した点。

こちらは最初は違和感を感じたが、この金庫を仮に残しておいた場合、

レジャットが中身を確認するリスクもあるわけで、大量のカネの中から数枚抜き取られた形跡があれば、

ルークのボディチェックが入って秘策が台無しになってしまう。

 

この時点での金庫の廃棄はグレシャムにとっては推定100億ベルク以上の価値のあるルークを確保するための投資であり、

必要な経費と位置付けていると考えている。

また、存在も割れている金庫が自分のもとに戻ってくる可能性が低いと考え、

損切りしたとも考えられる。

 

ルークが偽札の偽札を出す際に、謎の身もだえ行動をとっていたが、

これは右腕のフラペコが目の前で痛めつけられているからともとれるし、

たとえ10,000ベルクでも失うのは苦しいという守銭奴描写ともとれるし、

ルークに注意がいかないよう陽動として演技しているともとれる絶妙な描写である。

 

ルーク達がハル人形との決別のシーンでは一人だけ財宝たちとの別れを惜しんでいたが、

グレシャム視点だと数々の地域で集めた財宝たちを失うのは悲しいだろう。

ボートの広さ的には積めそうな気もするが。

 

そして見せ場であるルークをかばって足を撃たれるシーンは普通にカッコイイ。

まあ、動機はグレシャムらしいのだが。

グレシャムにとっては、自身の足よりカネのなる木であるルークの方が価値が高いということだが、

グレシャムの異常なまでのカネに対する執着を感じられるシーンでもあり、

改めてルークの可能性 100億ベルク相当を稼ぐということの難しさを考えさせられる。

 

帝国の一般労働者月収が4万ベルクであることから、

日本円ではおそらく1ベルク5円程度の価値だと見込めるので、

『噓食い』における館越え挑戦権に必要な金額ぐらいだと思えば、

足の1本や2本安いものなのかもしれない。

 

 

 

■狂気の追跡者レジャット爆誕

 

完全に帝国と敵対する形となってしまい、

逃げるルークを追いかけるターミネーターの様相を呈してきたレジャット。

 

帝国の人材の状況は不明だが、レジャットクラスの知と暴を兼ね備えた人間が何人いるか、

グレシャム商会に対抗できる武力や人材がいるのかどうかが気になるところ。

 

諜報部の上司や武力行使ありきの軍属の人間たちであれば、

レジャットの知や暴を上回る可能性はあると思う。

ただ、グレシャムやフラペコの反応から、

レジャットの総合力は帝国屈指なのではないかと考える。

 

 

 

最高に熱い展開からの帝国編突入。

今後の展開が非常に気になる。ただ、今後の展開以上に、

奴隷船に残されたグレシャムの手下たちの安否が気になる。