ハイパーインフレーション番外編 プロトタイプ所感・考察
番外編はまさかの「超速!連載グランプリ2019」に投稿していた、
プロトタイプとも言うべき第一話だった。
正当な番外編も読みたかった思いはあるが、
当時「超速!連載グランプリ2019」の存在を認識していなかった私としては、
本作をどこかで読めないかいろいろ調べていたので、
読むことが出来て大満足である。住吉先生、ジャンプ+編集部に感謝申し上げる。
さて、内容については本編1話~2話と大きく変わらないが、
いくつかあった変更点について気になった点を列記する。
現在連載中の内容を本編、今回の番外編を読切版と暫定的に定義する。
■おばば(村長)について
本編では登場しないキャラクター。
おばばとルークとの奴隷と金についての考え方などの会話内容については、
本編ではハルが請け負う形で踏襲している。
さらっと心を読む力を習得しており、
興奮してハンザ語で話すルークに対して、
自身はガブール語で話すという離れ業をやってのけている。
破格の性能である。
本編ではルークは200年ぶりの強い欲望の持ち主と、
ガブール神が言っていたが、読切版ではその記載は無いため、
おばばもその昔に生殖能力と引き換えにこの能力を得たのかもしれない。
「争いばかりしているガブール族を一つにしたい!
だから、私に心を読ませろ!」(妄想)
または、実はおばばも以前資本主義の方法で帝国と歩み寄ろうとした過去を持っており、
ハンザ語が分かっていて、側近には冗談めかして心を読めると言っているだけかもしれない。
残念ながら、奴隷には不向きということでマンハントの渦中で殺されてしまったので、
真相は分からない。(そもそも本編に出ていないので、分かったところでだが)
■ハンザ帝国について
本編のヴィクトニア帝国に対して、読切版ではハンザ帝国となっている。
こちらも通貨の設定はベルクで、話の展開もほぼ一緒なので、
単純に名前だけ変わっているととれるが、
ヴィクトニア帝国が島国設定に対して、ハンザ帝国は大陸と明記されており、
シルエットやそもそも通貨名のベルクの語感がマルクと似ていることからも、
モデルはドイツと思われる。
本編ではヴィクトニア帝国以外の諸外国の情報はほとんどなく、
流刑地としてオーストラリア的な描写があるのみではあるが、
読切版とは役割の異なる形でハンザ帝国が今後の本編に出てくることはあり得るかもしれない。
■ダングラール(レジャット)さんについて
本編の主要メンバーで一番容姿やポジションが変わっていないのに、
名前だけ違うダングラール(レジャット)さん。
本編のレジャットという名前については、
1925年に「贋金つくり」という作品を発表している「アンドレ・ジッド」が由来ではないかという予想が、
ツイッター上であったため、
この説を有力と仮定すると、連載としてプロットを再構築するにあたり、
贋金に焦点を当ててリネームしただけの可能性は高い。
ダングラールという名前で最初に浮かんだのはモンテ・クリスト伯(巌窟王)の登場人物だが、
作品のテーマ的には関係なさそう。
ただ、モンテ・クリスト伯の作中ではダングラールは悪人だったので、
本編同様帝国のスパイの設定はあったのかもしれない(現状非公開の2話ネームで記載あるかもしれないが)。
■個人的に良いと思った変更点
ガブール語は横書き、ハンザ語は縦書きだったのが、
本編では状況で察してくれスタイルになっている点。
読切ではルークが興奮するとハンザ語で話してしまうという演出に一役買っていたが、
少々読みにくい要因になりうるので、良い改変だと考える。
奴隷の監視を担うのがガブール語のわからない帝国の人間から、
親帝国派のガブール人になっている点。
ガブール人の奴隷の会話内容も分かり、
見せしめ後の脅しを行う役割としても、
この改変が効果的に機能している。
■さいごに
「超速!連載グランプリ2019」において、本作品にいいジャンを投じた紳士淑女の皆様に感謝する。当時投票どころか存在すらなかった私に価値はないぞ。