warayamanga

主にハイパーインフレーション(漫画)について書いていきます

ハイパーインフレーション13話考察 4人の救世主について

ハイパーインフレーション13話公開から1日が経ち、まだ興奮冷めやらぬ中、今回はいきなりぶっこまれた過去の4人の救世主についてまとめ、自分なりの考察をしたいと思う。

 

■4人の救世主

 

レジャットが金品をダシに巫女に近づくことで、存外情報を得ていた。

おおよその誕生のタイミングと異名や名前およびその影響度である。

では、一人ずつ概要をまとめる。

なお、前提条件として本考察では各王達の能力は生殖能力の代償として得ており、それぞれ能力の方向性は違えど、何らかのコピーまたは同じものを大量に生成するものと仮定する。

 

■3000年前の救世主 戦王イエフ

 

鉄で作った大量の武器によって古代世界を征服した。

イエフが救世主・能力者の初代かは厳密には不明だが、伝承として残っている最古の王として、暫定的に初代として考察する。

 

鉄の戦闘における優位性は語るまでもないが、現実世界では古代オリエント世界のヒッタイトが鉄を武器や戦車に活用することに成功して、青銅武具相手に無双したとされている。ただし、これは異説も多く完全にヒッタイトのみが持ちえたものかは不明。

余談だが、この時代をテーマにした漫画『天は赤い河のほとり』は面白いのでオススメである。私は歩兵隊隊長ミッタンナムワが好き。

 

イエフの背景は鉄剣のようなシルエットがあるが、イエフ自体が持っているのは鉄の槍である。そのため、鉄剣をコピーする能力ではなく、融解した鉄をドロドロっと生成できたのではないだろうか。まあ、無限に鉄剣を生成する能力でも、再度溶かせばいいだけなのでどっちでもいいが、ビジュアル的には融解した鉄の方がガブール神好みな気がする。

 

後述の王とは異なり、明確に古代世界を征服したと書いてあるため、まさに王と呼ばれるにふさわしい成果と言えるだろう。

 

・ガブール神とのやり取り(妄想)

イエフ「俺たちに足りないものは大量の武器だけなんだ!武器さえあればあんな奴らにガブール人たちは負けないっ!ガブール神!ありったけの鉄を!大量の戦車を、武器を、作っても作っても有り余るほどの鉄を寄こせっ!」

 

■1000年前の救世主 餓王タツ

 

バッタの大群を率いて大飢饉を起こした。先代救世主からエグさが増しすぎな気がする。

黙示録にもあるバッタの大群による飢饉は、この世界ではタツバが起こしたらしい。

『喧嘩稼業』の佐藤十兵衛は大量のバッタを召喚する悪魔の生まれ変わりと言われていたが、ここにマジモンがいたことになる。

 

能力はシンプルにバッタを大量生成するのだろうが、本作の主人公がルークでよかった。タツバ主人公の作品だと絵面と住吉先生の作画負担がどえらいことになっていただろう。

 

・ガブール神とのやり取り(妄想)

タツバ「俺たちにばかり食料を作らせて、あいつらは食うだけ、、しかも虫の被害で凶作なのに、税は増やすばかり、、許さない!やつらに飢えの苦しみを、食料を無慈悲に奪われる苦しみを思い知らせてやる!」

 

■500年前の救世主 病王スペト

 

疫病を蔓延させヨーロビア大陸の人口3分の1を殺した。相対的な年代的にも規模的にもモデルは14世紀ごろのペスト大流行だろう。

 

ペストはペスト菌によって引き起こされる感染症で、皮膚の内出血の様子から「黒死病」と呼ばれることで有名。『鬼滅の刃』における「黒死牟」も黒死病から来ているとされ、感染症としてはトップクラスの致死率も相まって世界的に有名な病気である。

 

2021年5月現在、新型コロナウィルスの猛威の中を生きる我々にとっては、このスペトの能力は悪逆非道かつ明確にヨーロビア大陸の人口3分の1を殺したとあるので、ちょっと笑えないレベルで凶悪な能力である。服装は笑えるのだが。

 

ここまでのことをしても、あくまでガブール人の間では救世主という扱いなのが、正義とは何か、悪とは何かを考えさせられる。

 

地味にヨーロビア大陸という名前が初出。この大陸にはハンザ帝国もあるのだろうか。

 

・ガブール神とのやり取り(妄想)

スペト「村の皆が死んだのは、あいつらが井戸に毒を投げ込みやがったからだっ!皆の痛みをっ、病気に苦しみながら死んでいく無念をっ!あいつらに、、いやあいつらの家族・友人・国民全員に味合わせてやるっ!」

 

■200年前の救世主 麻王ヘアン

 

アヘンを広め帝国を堕落させ痛みを感じない兵を作り上げた。敵の弱体化と味方の強化を図っている点では、従来の王より能力の活用がされている。『RAVE』のダークブリングの能力の相反する力も活用していたドリュー幽撃団を彷彿とさせる。

 

帝国がアヘンを世界中に売りさばいているとルークが言っていたが、200年前にはヘアンがばらまいていたようだ。ヘアンが堕落させた帝国はおそらくヴィクトニア帝国のことだろうが、この時の経験からアヘンの売買は敵国弱体化にもつながり一石二鳥だと気づいたのだとすると、皮肉なものである。

 

コミックDays連載中の『満州アヘンスクワッド』では、上質なアヘンをめぐり、ロシアや中国も絡んだ争奪戦が描かれているが、ヘアンの作るアヘン(ケシ)はどの程度の品質だったのか気になるところ。

 

成果が書かれていないが、本編の現状を考えると、近代兵器の前に早々に駆逐されてしまったのではないだろうか。いくら痛みを感じなかったとしても四肢を飛ばされ心臓を撃ち抜かれてしまっては、絶命する。

 

・ガブール神とのやり取り(妄想)

ヘアン「このケシの成分は毒にも薬にもなるんだ!こいつが大量にあれば、奴隷商人どもも兵士どもも快楽の沼に引き込んで戻ってこれなくできる!ガブール神!やつらには偽りの夢を!俺達には真実の夢を見させてくれ」

 

■現代の救世主(?) 贋王ルーク

 

贋札を売り世界経済を破壊する。レジャットに勝手に異名をつけられるルークさん。歴代の能力者たちに比べると正直やばさは一枚落ちる印象。簡単ではないがベルク札のデザイン刷新でも被害は最小限で食い止められるし。ただ、金本位制においては危険な能力であることに変わりない。

 

レジャットも言っているが研究対象として監禁することを考えると過去の王たちの中では最も安全であるのは間違いなく、研究したところで意味があるかは不明だが、数百年に一度の好機であることは間違いない。

 

巫女たちがこの異名を採用するかどうかが気になるところ。ハルがもっと好意的なネーミングを引っ張ってきそうである。ただ、1話の贋金製造の件で処刑されそうになった時に、死刑執行派から、「贋の救世主だ!!」と言われており、ある意味皮肉の聞いた伏線回収ともいえる。

 

■王たちの服装

 

全員もれなく薄着のショタであるが、私はこれはレジャットの妄想税もあると思う。そもそも直近のヘアンはともかく、イエフは3000年前なのでビジュアルは分からないだろう。レジャットは13話での行動の端々に、任務はともかくとして少年趣味は持っている可能性を示唆しており、勝手にルークから連想しているのではないだろうか。

 

というよりそうであってほしい。史実なら、薄着すぎである。ルークですら布の面積が少ないとネタにされているのに、そのはるか上を行っている。タツバに至っては申し訳程度の包帯しかない始末である。バッタが衣服も食い漁ることの象徴なのかもしれないが。

 

■ガブール人の栄枯盛衰

 

かつての救世主の中でイエフは明確に古代世界を征服したとある。イエフ以外の王も、その圧倒的な能力を考慮すると、征服には至らずともかなりの影響力をもっていたのは間違いないだろう。だが、本編の世界では盟主はヴィクトニア帝国であり、ガブール人は奴隷・蛮族として虐げられる存在である。

 

直近のヘアンに至ってはわずか200年前だが、現在のガブール人の扱いは凄惨な状況である。またレジャットが、ガブール人の奴隷貿易は400年続いていると明言しており、スペトが病王として活動していた数十年後からはガブール人の奴隷貿易が始まっていることになる。

 

これには主に二つの要因があると考える。

 

まず一つ目が、能力への対抗策が帝国および歴国に備わってきているということ。『進撃の巨人』において、マーレが誇る巨人という戦力が近代兵器の前には圧倒的な存在となり得なくなったように、救世主の力だけで及ぼせる影響力が徐々に減ってきたのではないか。救世主誕生の間隔が狭まってきているのも、栄枯盛衰のループの期間が短縮化していることとリンクしていると考えると合点がいく。

 

二つ目はガブール人の気質によるところだと考える。ガブール人は、儀式や祈りの時間、友人や家族と過ごす時間を重要視していることをハルが語っている。また、そのガブール人も一枚岩ではなく、首長のような親帝国派もおり、統率もなされていない。加えて過剰なまでの救世主信仰から、他人頼みな行動も多くみられる。ゆえに、救世主のワンマンで付けた力を維持しようというマインドや能力の欠如、および組織だって国を成していくことが歴史上難しかったのではないだろうか。イエフータツバ間が2000年、タツバースペト間は500年空いているので、この期間はそれなりの年月、栄華は誇ったのかもしれない。

 

いずれにせよルークの夢想するガブール人の永久楽土!!千年帝国の実現は難しいだろう。奪われるものは奪い返そうとする。それが世の常なのだから。

 

■救世主の能力のデメリット、寿命について

 

現時点で語られている明確なデメリットは3つ。

 

・生殖能力の代償のため子孫を残すことができない

・能力を使用しすぎると心臓が軋み、体がダルくなる ※頭がクリアになるメリットもあり

・発育が止まり性器も退化する ※巫女談

 

仮にこれだけだとすると、個人の視点的なデメリットはともかく、能力のとんでもなさを考慮するとやはり破格である。ただ、今後明かされるデメリットがあってもおかしくない。例えば能力の使用制限または力の上限値の低下である。グレシャムの青写真では、1日1億ベルク生成を365日続けて、365億ベルク生成する作戦だが、オークションの際に1億ベルク生成した後ルークは疲労で丸一日寝込んでいる。もちろん姉を失った喪失感や純粋な疲労もあるので、この情報だけでは判断できないが、一般的な射精1回分より1億ベルク生成の方が体力を使うことは想像に難くない。また、一般的な生殖能力も10代をピークに減退していくことを考えると、生成可能な量も減っていく方が自然ではないだろうか。かつての王達がどうだったかもいずれ語られてほしい。

 

また、気になるのは寿命である。

本編で年齢について記載があるのはグレシャムが60近いという情報のみ。先進国のヴィクトニア帝国とガブール人の間にどれほどの寿命の差があるかは不明だが、首長のヴィジュアルを見るに60年近くは寿命があると考える。だが、仮に直近の王であるヘアンが能力発動から天寿(約60年と仮定)を全うしたと考えると、12歳くらいから約50年を生きたこととなり、そうすると本編の150年前の時点で没したこととなる。その場合、帝国側やガブール人側にももう少し情報があってもおかしくない。なので先の項目では早々に殺されたのではないかとしたが、そもそも先述の能力的な使用制限に加え、まさに『進撃の巨人』のように寿命が決まってしまっているのではないだろうか。例えば精力盛んな10代の間に相当する約8年間など。そう仮定すると影響力が限定的となってしまったことも納得がいく。妄想だが、25話くらいで救出したハルから救世主の末路を聞いたレジャット(帝国を裏切り済み)がルーク生存のためにガブール神の聖地に向かう展開がありそうである。

 

 

 

さて、唐突に明らかになった過去の救世主達。能力や名称は『トリコ』、『HUNTER×HUNTER』を彷彿とさせある意味ジャンプっぽいのだが、スペトやタツバの能力は無差別殺戮兵器であるため、少年誌で出していいレベルではない。我々はルークが主人公としての本編を追っているが、世界の一般市民からするとハイパーインフレーションは脅威でしかない。

ガブール神はルークに、「だが用心して使え 人間は「力」に振り回され…ときに破滅する」と伝えており、過去の救世主のことをさしているかは不明だが、幾度となく繰り返させる諸行無常・栄枯盛衰を3000年以上にわたる期間見てきたのだろう。今後、過去の王について本編で語られるかはわからないが、現代の王であるルークの目的が無事達成されるか、ハイパーインフレーションは本当に起こるのか、服の露出度は増していくか、など今後の展開に目が離せない。