ハイパーインフレーションの根幹の面白さとは何か~ハイパーインフレーションと私~
さて来る28日(金)は約一カ月ぶりのハイパーインフレーション本編更新である。
読切版の掲載があったとはいえ、ここまで更新間隔が空くと期待値も自然と高まるものだ。仲間内(私含め2人)では、次こそデフレ(ここでは、あまり面白くない回の意)が来てしまうのではないかと隔週で危惧するのだが、実際に起きたことはない。現代の日本のデフレ社会とは大違いだ。
今回はハイパーインフレーションと私の出会いから、その関係性の変化についてまとめながら、本作品のどこに最も魅力を感じるか考察してみた。
かなり個人的な記事のため、興味ない方はブラウザバック推奨だが、
同じような感情の変化を辿った方も多いのではないかと思うので、
良かったら読んでいただきたい。
■前提条件
私が現在連載を追っている週刊誌・WEB媒体は主に下記である。
ジャンプ+
モーニング
イブニング
マガポケ
コミックDays
ざっくり100作品くらいは連載を追っているが、
ハイパーインフレーション掲載のジャンプ+に限定すると、
大体7~8割は読んでおり、新連載は基本目を通すというスタイルだ。
余談だが、ジャンプ+連載作品で、ハイパーインフレーション以外では、
忘却バッテリー、左利きのエレン、トマトイプーのリコピン、ゲーミングお嬢様などがフェイバリットなため、
ハイパーインフレーションで書きたいことを書き尽くしたらこのあたりの作品にも触れたい。
■ハイパーインフレーションとの出会い
私は2019年にやっていた「超速!連載グランプリ2019」はノータッチだったため、
読切版の存在は知らず、2020年11月に公開された1話が出会いだった。
ここまで一種の狂信者のような記事連投をしておきながら恐縮だが、
正直当初1話については変わった設定の漫画で面白いなという程度で、
そこまでセンセーショナルな感動は覚えていなかった。
ガブール神いるのかよ!とか、地獄のフルコース傷ついていたのかよ!とか、
主にガブール神に対してのツッコミしかしていなかった。
2話についても面白く読んではいたが、
この時点ではむしろ1話より若干ながら期待値は下がった。
というのも、2話の時点では、まだ突飛な設定ありきの勢い重視漫画というイメージがあり、
オークションのハルがルークにノーリアクションなことや、
偽札で落札目指しても最終的には絶対バレて結果揉めるだろ、とか、
ディティールの描写の不備を、あろうことか疑ってしまっていたのだった。
強い関心度で読んでいなかったとはいえ、1話のギャグ描写を悪い意味で引きずっているのかと邪推していた。
今思えば大変浅はかだったと言わざるを得ない。反省している。
■転換
そして3話公開である。
前話の展開の答え合わせ的な回で、
各キャラクターの思考や性格などが一気に描写され、
自分の中で、本作の魅力がハイパーインフレーションを起こした回だった。
私が疑問に思っていたところもしっかり理由があったのだ。
作戦は成功したが、悲しみと怒りに燃えるルーク
中心人物で反乱を主導し、服もちゃっかり新調、
大人の余裕でルークを受け入れながらハル生存の希望を与えるレジャット。
オークションを台無しにしたルークに対しての報復より、火事場泥棒を優先する、
カネに対して尋常ならざる欲望を持つグレシャム。
物語の屋台骨が組みあがっていく音がした回で、
個人的にはこの3話から一気に物語に引き込まれていった。
■船上での頭脳戦・肉弾戦~12話
もうこの時点では狂信者なので、基本的には最高としか言うことはないのだが、
船上という限られた空間で、自陣の強み・弱みや相手の性質を把握しながら展開する
チキンゲームの攻防戦からの一連の流れは、見事と言わざるを得ない。
このあたりの面白さの分析なのだが、
私は縛りプレイのように、ある条件下で最大の成果を出そうとする展開が好きなのだと再認識した。
逆境を乗り越えようともがく様 と言い換えてもよい。
そして、その最大の成果を出そうとするのが主人公陣営だけでなく、
敵側の陣営も平等の条件であることが望ましく、
個人的な見解としてハイパーインフレーションはこの条件に当てはまっており、この物語の大筋としての面白さの根幹だと考える。
頭脳戦で冷めてしまう内容・展開としては、
主人公が頭が良いまたは強い展開を無理やりつくるために敵や周囲の人間の思考能力・戦闘能力が弱体化したように見える展開や、
逆境を打開するアイテムや状況が都合よく配置される展開である。
嫌いなわけではないが、前者は『バキ』シリーズなどで散見される。
ハイパーインフレーションでは、ルークは能力こそ特殊だが、
そこまで役に立たない能力であり、決して万能とはいえないため、
商売で培った経験や他人の力を借りることで目的を達成しようとする。
ルーク以外もグレシャム・レジャット・フラペコ、、ひいては屈強なガブール人達も、
各々が等身大の、自分のできる限りの範囲でベストを尽くしている描写がたまらないのだ。
この船上戦では、例えば以下のような自陣を有利にしようとする策謀や行動がなされている。
・グレシャム合流直前に奴隷船の銃を海に捨てるフラペコ
・偽札をばら撒き喪失感を強く植え付け金庫を落とそうとするルーク
・入れ替え案に乗ったふりをして裏切る算段を立て、その後入れ替え案の内容が更新された後も裏切る算段を立てたグレシャム
・グレシャムを抑止しながら、裏切りの方法を見破り、当初に布石を打っていたダウーというカード以外にも対策を立てたレジャット
・俺たちの運命はいつも知らないところで勝手に決められちまうと言いながらも、レジャットを信じ全力で立ち向かう屈強なガブール人
この点が個人的に最もハイパーインフレーションの読み味を上質なものに仕上げていると考える。
『HUNTER×HUNTER』のクロロ・ルシルフルが動機の言語化について、自分を掴むカギと表現していたが、今回本作の面白さとは何かについて向き合い言語化できて、妙な満足感を感じる。
■単行本1巻
そして極めつけは単行本の帯にある言葉である。
未購入の方にも買ってほしいので、詳細は割愛するが、そこにあった言葉はまさに本作の根幹の面白さについて、このような思考で創られたのかと思うと、もはや安堵の気持ちが湧くレベルである。
13話公開まであと26時間。私も作中人物に負けないように、仕事と育児に取り組もうと思う。
無論ー真剣に。